組織のカルチャーを維持する方法について

背景

この前、Openness というカルチャーに関する記事を書いた。

Openness について - satoshihirose.log

組織のカルチャーについてこれまで思いを馳せることも多く、何となく考えを文章にしてすっきりしたくなったので記事にする。

組織のカルチャーとはどういうものか

自分が想定する「組織のカルチャー」ってのは、ざっくり「組織にとって好ましい振る舞いを規定することで生産性を向上させるためのもの」だ。人によってそうでない捉え方をする人もいるかもしれないが、ここでは無視する。

カルチャーは、その個別の内容に関わらず、メンバーに共通の価値観を与えることで共通のプロトコルを用意し、コミュニケーションをスムーズにするという効果がある。 組織内の多様性が求められる昨今においても、まあ人間が自分と似た人を好きになるのは避けられないので、ますますカルチャーを作って維持する重要性は大きくなっていくかもしれない。そのような性質のものであるので、強いカルチャーというのは、規範として人々の行動を変える、つまりそれにより人々の意志決定に影響を与えるものだ。 逆に言うと、それによって人々の日々の意志決定が左右されないものなら、それは組織のカルチャーではないと個人的には思う。

また、組織が大きくなるにつれ、カルチャーがどれだけ組織の生産に貢献したかROIを測ることは難しくなると思うので(探せば研究なんかは出てくるかもしれないが)、カルチャーを維持する行為は一種のカルトみたいなものだとは思う。そのような集団がどうやって形成・維持されるかってところに自分の興味が惹かれる理由があるのかもしれない。それもあり、今回の記事では、どうやって組織に合ったカルチャーを規定するかには言及せず、ただ維持するための一般的な方法について考えていく。

ちなみに、自分が初めて本物の企業文化とはこういうものなのだなと強く実感したのは AWS Japan で働いたときで、自分の考えはそこでの体験に大きく影響を受けているので悪しからず。 (更に言うと、自分は企業の経営者でもマネージャーでもなく、企業文化の研究者でもない。ここで述べる理解はただのICの感想でしかないので、それも悪しからず)

組織のカルチャーを維持する方法

組織のカルチャーを維持する方法として、「明文化する」「日常的に繰り返し言及する」「評価の軸とする」でまとめた。

明文化する

明文化されていないカルチャーは社内外関わらず参照できず、理解が進まない。人々が同じものを目指していると思える原典として、その定義が必要だ。社外に対しても公開していると採用前に候補者の心構えになるし、フィルタリングをする役割にもなるだろう。

定義は具体的すぎず、適用範囲がある程度は広くなければならない。抽象的になることで解釈の余地があるとメンバー間での議論を生む。異なる運用が発生する可能性を生むので善し悪しではあるが、そのような議論は真剣にカルチャーが捉えられていて意志決定に取り入れられている証でもあり、そこまで問題視する必要はないと思う。

キャッチーで使いやすいくらい短いエイリアスがあると良い。日常で言及しやすくなる。

日常的に繰り返し言及する

人は日常的に言及しないと忘れてしまうので、しつこいと思うくらいに日常で言及する必要がある。特にリーダーシップ層が日々繰り返し言及することが大事だ。企業の責任ある人が重要視しないものはもちろん大事にはされない。これは All Hands なんかでカルチャーを交えた個人の体験を語るでも良いと思う。

カルチャーを維持するには仕組みで担保する必要がある。大小色々考えられるが、例えば、

みたいなものだ。まあともかく、日常的に意識される仕組みが無いと、ただ掲げられているだけのカルチャーは形骸化してしまう。形骸化したカルチャーはそれに惹きつけられた人を落胆させるし、それはロイヤルティの低下に繋がる。

評価の軸とする

人の行動は、賞罰によって変わる。カルチャーに沿った行動を称揚することで、人の行動を変えることはまあ出来るだろう。 例えば、

  • 面接時に「○○のような行動をとった時のエピソードを訊かせてください」のような質問をし評価に使う
  • 定期評価時、もしくは昇格評価時に、カルチャーに沿った行動によるアチーブメントを軸に評価をつける
  • カルチャーに従った行動を表彰する制度を用意する

など。もちろん程度も問題であり、評価に10%程度の影響しかなければその効果は少ないだろう。

さいごに

もうちょっと書けるかと思っていたが、こんなもんか。

カルチャーが強く表れているからと言ってすべての人が働きやすいわけではなく、そのカルチャーが自分に合うかもどうかは別問題である。ある種のカルト的な集団は合わない人には合わない。また、強いカルチャーがある組織に所属する経験がないと、その効果や機微は中々理解しにくいとも思う。

自分はそのような組織でとても働きやすかったと感じた経験があり、カルチャーの色が強そうな組織を見ると応援したくなる。IC とマネージャーとでもちろん違いはあるが、カルチャーを組織内で涵養させるためにできることは少なからずあるので、自分の気に入った組織の気に入ったカルチャーがあるならそれを大事にしたいものだ。