マイケル・ルイス「かくて行動経済学は生まれり」を読んだ

マイケル・ルイス氏のファンならば、と訳書が出たと聞いて読了した。

かくて行動経済学は生まれり

かくて行動経済学は生まれり

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの半生(人生)を描き、彼らが発展させた行動経済学について書かれていた。 マイケル・ルイス氏の著作はどれも対象のテーマ以上に関係者の人間ドラマが良く書かれていて読んでいて退屈しない。

ダニエル・カーネマン - Wikipedia

エイモス・トベルスキー - Wikipedia

ダニエル・カーネマンはファスト&スローで知っていたが、その著作は上巻で投げてしまっていた。読み始めた当時はその心理学的なアプローチが読んでいてもやもやしていて、コーナーケースを突く様な質問の結果、認知バイアスがあったとしても日常に何の影響があるんだみたいな気持ちだった気がする。けれども、この新作を読んで、彼らが明らかにしたかったことが何となくわかったような気がした。

彼らは人の判断や予測、意思決定に関わる原理について研究をしていた。人間が合理的な判断をいつも出来る気はしないが、それがどのような理由で合理から離れてしまっているかを紐解こうとしていた。本の中ではその調査に使ったアンケート用の質問も豊富に登場し、自身でその回答を行った理由を考えてみるのも面白い。確かに、自分は無意識に何らかの原則に基いて判断をしている。自分が陥りやすい認知バイアスの知識は今後の判断で役に立つこともありそうである(しかし、これも彼らが言う代表性の認知バイアスとして働きそうではある)。

彼らはイスラエルで交流を深め研究を行っていた。彼ら心理学者は戦時中の軍隊で重宝されており、彼らのような大学の教授が戦場に赴いていた事実は驚いた。人間の判断についての疑問は、人の命や国の命運に関わるような境遇から生まれた実際的なテーマであった。

ヒューリスティックス | 認知心理学

これらの研究は1970年代とか大分古い話のようなので、現代にはさらに面白い研究結果が出ていそうである。