30年後読んでも面白いであろう海外SF小説10選

これはなに

ここ3-4年、散発的にSF小説を読むにつれSF小説好きとしての自認が徐々に強くなってきた。そこで、大した冊数もない自分の既読本の中から、特に面白いと思ったものを挙げて自分の考えをまとめる。

このリストの中で一番古い作品は1949年の一九八四年で、一番新しい作品は2019年の息吹だ。基本的には SF は新しいものが良い。科学技術の発展とともに生活様式や社会が変わり、想像力の土台となる常識が更新されていくからだ。一方で、それと同時に普遍的なテーマを取り扱った SF は古びれない。70年以上前に書かれた一九八四年やファウンデーションは今読んでも傑作である。特に銀河を旅するような遠未来を描くハードSFは、舞台が現代社会から時空間共に離れているため普遍的なテーマを選ばざるを得ず、その傑作は30年後読んでも今と変わらず面白いだろう。自分がハードSFを好んで読む理由と今回のリストにハードSFが多く含まれている理由がそれだ。

30年後読んでも面白いであろう海外SF小説10選

息吹 (テッド・チャン

あなたの人生の物語」を映画化した「メッセージ」で、世界的にブレイクしたテッド・チャン。第一短篇集『あなたの人生の物語』から17年ぶりの刊行となる最新作品集。人間がひとりも出てこない世界、その世界の秘密を探求する科学者の、驚異の物語を描く表題作「息吹」(ヒューゴー賞ローカス賞、英国SF協会賞、SFマガジン読者賞受賞)、『千夜一夜物語』の枠組みを使い、科学的にあり得るタイムトラベルを描いた「商人と錬金術師の門」(ヒューゴー賞ネビュラ賞星雲賞受賞)、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」(ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞受賞)をはじめ、タイムトラベル、AIの未来、量子論、自由意志、創造説など、科学・思想・文学の最新の知見を取り入れた珠玉の9篇を収録。

https://www.amazon.co.jp/dp/4152098996/

あなたの人生の物語テッド・チャン

地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語―ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。

https://www.amazon.co.jp/dp/4150114587/

三体(劉 慈欣)

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。 数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?

https://www.amazon.co.jp/dp/B08KWLBML3

ファウンデーションアイザック・アシモフ

銀河系宇宙を支配する大銀河帝国に、徐々に没落の影がきざしていた。ひとたび銀河帝国が崩壊すれば、各太陽系は小王国に分裂し、人類はふたたび原始の暗黒時代に逆行する運命にあった。このとき現われた天才的な歴史心理学者ハリ・セルダンの予言は? 巨匠の最高傑作たる未来叙事詩三部作。ヒューゴー賞受賞作。新訳決定版。

https://www.amazon.co.jp/dp/4488604110/

ハイペリオンダン・シモンズ

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡―古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める“時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く“時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。ヒューゴー賞ローカス賞星雲賞受賞作。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00EQ0Q78O

エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード

地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。容赦なく人々を殺戮し、地球人の呼びかけにまったく答えようとしない昆虫型異星人バガー。その第三次攻撃に備え、優秀な艦隊指揮官を育成すべく、バトル・スクールは設立された。そこで、コンピュータ・ゲームから無重力訓練エリアでの模擬戦闘まで、あらゆる訓練で最高の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描いた、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作!

https://www.amazon.co.jp/dp/4150119279/

竜の卵(ロバート L.フォワード)

ほんの数日間のファーストコンタクトの様子を書きながら、同じ時間に進んでいく、外宇宙文明の歴史小説でもある奇妙なSF。 それを実現させるために、人類の100万倍の速度で生きる「チーラ」とよばれる中性子星人が登場。 彼らの一生が人類の15分であるため、直接のコンタクトはほぼ不可能であるが、それでも互いを理解するために行われる通信。 そして、ついに10秒間の物理的なファーストコンタクトが実現する・・・。 ロバート L.フォワード 竜の卵 - かせいさんとこ

https://www.amazon.co.jp/dp/4150104689/

ブラインド・サイト(ピーター ワッツ)

突如地球を包囲した65536個の流星の正体は、異星からの探査機だった。調査のため出発した宇宙船に乗り組むのは、吸血鬼、四重人格言語学者、感覚器官を機械化した生物学者、平和主義者の軍人、そして脳の半分を失った男。彼らは人類の最終局面を目撃する―。ヒューゴー賞・キャンベル記念賞・ローカス賞など5賞の候補となった、現代ハードSFの鬼才が放つ黙示録的傑作!

https://www.amazon.co.jp/dp/4488746012/

星を継ぐもの(ジェイムズ P.ホーガン)

月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。

https://www.amazon.co.jp/dp/448866301X/

一九八四年(ジョージ・オーウェル

“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。二十世紀世界文学の最高傑作が新訳版で登場。

https://www.amazon.co.jp/dp/B009DEMC8W/

雑記: 読む本の選び方

今昔含めて世界で出版されたSF小説は膨大な数ある。人生は有限で、面白い本、自分に合った本を優先的に読みたい。そのためこんな感じで自分が読むSF小説をフィルタすることで、ある程度クオリティを担保している。

  • 翻訳物: 翻訳されたものは当地で売れた、翻訳者と編集者のお眼鏡にかなったなど、一定のクオリティが期待できる。大森望さん訳の本は特に信頼できる
  • 受賞歴: ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞などのSF関連の賞を複数取得していると基本的にクオリティが高い
  • その他: 人がブログ記事や書籍中で紹介しているもの、何らかのランキングに載っているもの

上記の条件下にあるような本を手に取り、あらすじを見て気になるものを選んでいる。 もちろん日本のSFも読むし例外はあるので、結局は自分の直感に従う。

おわりに

この中で普段SFを読まない人、時間がない人に一冊だけ勧めるとしたらテッド・チャンの息吹を勧める。一番好きな作家を一人挙げろと言われたらテッド・チャンを挙げるだろう。この中で順位を着けるなら、上位三つは息吹、ハイペリオンファウンデーションだ。

ファウンデーションはAppleTV+でドラマ化されたのを見たが、小説とは別物になっていた(映像は良かったが、脚本が微妙な出来だった)。砂の惑星デューンの映画化は小説に割と忠実に作られていたが、それでも映像作品は派手な動きと音楽、見たことのない画を楽しむもので、小説とは楽しみかたが違うなと感じた。長大なストーリーと緻密な設定や世界観を楽しむには小説の方が向いており、上記リストにはそんな感じの作品が多い。

SF小説を読むことは、想像力は豊かにし、柔軟な思考を育んでくれる。その他の文学と同様に社会の一面を切り取り啓蒙したりもする。近年ではSFに注目したビジネス書も出版されるなどその効用に注目されていたりもする。

しかし、個人的には、SF小説にはそんなビジネスの道具として効能を求めるようなつまらない期待はせずに、好奇心を刺激し、自分の常識を揺さぶってくれるような強烈なエンタメとしてのSF小説との出会いを今後も楽しみにしていきたいと思う。