狭小邸宅を読んだ
不動産クラスタでちょくちょく引き合いに出されるので気になっていた狭小邸宅を読み終えた。 ペンシルハウスを売る消費者向け不動産会社の営業をしている主人公とその業界の話である。
雰囲気は以下のbotを参照
「おい、お前、今人生考えてたろ。何でこんなことしてんだろって思ってたろ、なぁ。なに人生考えてんだよ。てめぇ、人生考えてる暇あったら客みつけてこいよ」
— 狭小邸宅bot (@kyosho_teitaku) September 1, 2016
「いや、お前は思っている。自分は特別な存在だと思っている。自分には大きな可能性が残されていて、いつかは自分は何者かになるとどこかで思っている。俺はお前のことが嫌いでも憎いわけでもない、事実を事実として言う。お前は特別でも何でも無い。何かを成し遂げることはないし、何者にもならない」
— 狭小邸宅bot (@kyosho_teitaku) September 3, 2016
「売るだけだ、売るだけでお前らは認められるんだっ、
— 狭小邸宅bot (@kyosho_teitaku) September 2, 2016
こんなわけのわからねえ世の中でこんなにわかりやすいやり方で
認められるなんて幸せじゃねえかよ。最高に幸せじゃねえかよ」
ほかの人のレビューはこちらの総論と各論が面白かった。
そちらから参照されているように、このコメントはとても共感出来る。
なぜならどこからそうなったのかわからないが、仕事ができるようになった「僕」は終盤の友人たちに会う場面などからわかるように、確実にどこかが狂っているからだ。つまり狂った営業マンだけが「狭小」な家を「邸宅」として売ることができ、その狂気に感染した人間が「狭小邸宅」に住む。そんな怖ろしい日本の現在を鮮やかに描く、実力派のデビュー作だ。
『狭小邸宅』 (新庄耕 著) | 今週の必読 - 週刊文春WEB
探している住宅はその人の人生の投影である。Amazonなどのレビューでは小説の終わり方はあまり評価されていないが、物理的な住宅に投影される「狭小」な自分と「邸宅」な自分の無自覚な自意識を描いたラストシーンは個人的にはとても強烈だった。