中田 敦『GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦 』を読んだ

TLで複数の人がおすすめしていたので読了した。

著者は日経BPシリコンバレー支局の中田 敦氏

個人の感想

全体的な書評はhido-sanの記事が参考になる。

sla.hatenablog.com

重工産業は規模が大きいので 1 % の削減が大きなコスト圧縮になる。

燃料管理にFESを利用すれば、年間の燃料コストを最大で2%下げることができるはず。つまり、2014年に52.7億ドルの燃料を購入していたサウスウェスト航空ならば、毎年1億500万ドルの燃料経費削減の可能性があるということを示唆しています。

ビッグデータを活用した航空燃料コストの削減 | GE Reports Japan

GEは、自社の事業に適用してきた生産プロセスのデジタル化による効率化のノウハウを、PaaSとして提供することを推し進めているようだ。 しかしながら、デジタル製造業への展開の旗振り(その辣腕振りは書籍を参照)を行ったCEOイメルトは 2017/6 に退任しており、市場からは評価されていなかったようにも感じる。

イメルト氏退任、もはや「主流」でない米GEの現実 :日本経済新聞

イメルト氏の改革は成功事例として後世に残って貰いたいものである。

マイケル・ルイス「かくて行動経済学は生まれり」を読んだ

マイケル・ルイス氏のファンならば、と訳書が出たと聞いて読了した。

かくて行動経済学は生まれり

かくて行動経済学は生まれり

ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの半生(人生)を描き、彼らが発展させた行動経済学について書かれていた。 マイケル・ルイス氏の著作はどれも対象のテーマ以上に関係者の人間ドラマが良く書かれていて読んでいて退屈しない。

ダニエル・カーネマン - Wikipedia

エイモス・トベルスキー - Wikipedia

ダニエル・カーネマンはファスト&スローで知っていたが、その著作は上巻で投げてしまっていた。読み始めた当時はその心理学的なアプローチが読んでいてもやもやしていて、コーナーケースを突く様な質問の結果、認知バイアスがあったとしても日常に何の影響があるんだみたいな気持ちだった気がする。けれども、この新作を読んで、彼らが明らかにしたかったことが何となくわかったような気がした。

彼らは人の判断や予測、意思決定に関わる原理について研究をしていた。人間が合理的な判断をいつも出来る気はしないが、それがどのような理由で合理から離れてしまっているかを紐解こうとしていた。本の中ではその調査に使ったアンケート用の質問も豊富に登場し、自身でその回答を行った理由を考えてみるのも面白い。確かに、自分は無意識に何らかの原則に基いて判断をしている。自分が陥りやすい認知バイアスの知識は今後の判断で役に立つこともありそうである(しかし、これも彼らが言う代表性の認知バイアスとして働きそうではある)。

彼らはイスラエルで交流を深め研究を行っていた。彼ら心理学者は戦時中の軍隊で重宝されており、彼らのような大学の教授が戦場に赴いていた事実は驚いた。人間の判断についての疑問は、人の命や国の命運に関わるような境遇から生まれた実際的なテーマであった。

ヒューリスティックス | 認知心理学

これらの研究は1970年代とか大分古い話のようなので、現代にはさらに面白い研究結果が出ていそうである。

3級FP技能検定を受験した話

もういい大人なので社会制度やマニーの知識を付けようと思ったため、試験を受けた。

3級 試験範囲 | 日本FP協会

合格のボーダーラインが6割のところ、自己採点の結果は以下だったので、合格したでしょう。

学科: 44/60

実技: 19/20

書店で物色して下記の参考書と問題集を購入したのは Amazon によると 2016/11/24.

はじめてまなぶFP技能士3級テキスト〈’16‐’17受検対策〉

はじめてまなぶFP技能士3級テキスト〈’16‐’17受検対策〉

はじめてまなぶFP技能士3級問題集〈’16‐’17受検対策〉

はじめてまなぶFP技能士3級問題集〈’16‐’17受検対策〉

試験日が 2017/01/22 だったので大体二ヶ月くらい。平均してそのうち半分の日数で1-2時間程度勉強したとすると総勉強時間は30-50時間程度か。 参考書を一周、問題集を二周と後は適当にザッピングした。このような試験にありがちだが、過去問と類似の問題が多いので、過去問を一通り抑えて理解すれば合格出来る(ただし問題は二択とかなのでややニッチな問題も差し込まれている印象を受けた)。2級は、3級の内容をやや強化した問題でその選択肢数が増えるだけらしいので、同様の方法で合格できそう。

3級の合格率は70%くらいある。

【FP3級は楽勝!】たった2千円の投資で一日2時間・2週間の独学で楽々と200%合格できる勉強法 - ひかる人財プロジェクト

2級になると選択問題も四択になり、合格率は35%とかになる。

FP・ファイナンシャルプランナーの合格率・難易度は? | FP・ファイナンシャルプランナーの通信教育・通信講座ならフォーサイト

自己啓発に終始した試みだったが、まあ税制などは知っておくに越したことはないだろう。 この世で避けて通れないものは死と税金である。

株価間倍率を確認するスクリプトを書いた

似た株や指標は似た動きをすることが多いので、その価格差が生まれた時を狙って取引をする手法があり、それは裁定取引の一種です。特に、日経平均TOPIXの倍率を指してNT倍率と呼んだりします。

今日のレンジ展望 相場見通しとここまでの市況。 個人投資家の相場観をサポート

NT倍率 日経平均比較チャート

各種株価間の倍率(これ何か呼び名はあるのだろうか)を確認しようと思いスクリプトを書きました。株価データは 株価データサイト k-db.com から取得しています(もっと良い方法あるだろうか)。

PythonとかPandasに慣れていなく雑です。

データダウンロードするスクリプト

計算してプロットするスクリプト

こんなグラフが出力されます。

f:id:wonderthinkanswer:20161211173832p:plain

finch+twirlでのhtmlレスポンスの返し方

finchでtwirlのテンプレートの出力を返したかった。

Endpoint[Text.Html]って感じでレスポンスのcontent typeを指定出来そうだが、ドキュメント読んでもText.plainの例はあったのだがText.htmlの例が無く、わからなかった。

結局これで解決はした。

val helloApi: Endpoint[Response] = get("hello") {
  val content = html.index().toString()
  val res = Response()
  res.content = Buf.Utf8("text/html")
  res.contentType = typ
  res
}

参考

市場への興味

7月に開催された Yahoo! Japan の Hack Day では最優秀賞は「日米為替における予測モデルの提案と評価 – 機械学習による為替予測AIの実装」というテーマのチームが選ばれたという記事を読んだ。どのような結果をだして最優秀賞に選ばれたのかとても気になるところである。

「異例中の異例? モノをつくらずに受賞」(Hack Day最優秀賞編) - Yahoo! JAPANコーポレートブログ — 「異例中の異例? モノをつくらずに受賞」(Hack Day最優秀賞編)

最近は市場が面白くて、金融についての書籍を気の赴くままに読んでいたりする。 数字の上下とそれを統一的に説明するような構造の理解には興味をそそられる。 直近読んだ書籍で面白かったのはこちら

金融データサイエンス―テクニカル分析の新展開

金融データサイエンス―テクニカル分析の新展開

千葉大工学部の先生の書かれた本で、日経平均の過去データを使いながらそれがどのような統計的性質を持っているかを教科書然として分かりやすく説明している。 例えば、株式市場の値動きは基本的にはほぼランダム・ウォークであるということは広く知られているが、それを実際に確認する。 日経平均や為替やトヨタの株価などの自己相関関数をプロットしてみても、95%の信頼区間の中に収まるという。その程度ではランダムに相場は上下しているのである。

現代のポートフォリオ理論の前提となる考え方に「効率的市場仮説」というものがある。市場は効率的であり、すべての情報は一瞬のうちに価格に織り込まれてしまうという考え方だ。 価格決定モデルとしても有名なブラック・ショールズ・モデルもランダム推移を前提としている。

それでは、株取引における経験則やテクニカル分析などは全てデタラメなのだろうか。 そのような疑問を解消しようというのがこちらの本の目的の一つでもある。

テクニカル分析が成功するのは、データに時間相関があり、その時間相関を引き出せるようなテクニカル指標が利用できる場合に限られる。従来の指標がそのような性質を持ち合わせたものだろうか、この疑問に答えるのが本書の1つの目的である。時間相関があるからこそ、将来がある確率でもって見通せる。 (中略) 本書では、テクニカル分析に利用価値があるのか、どのような場面で価値があるのかを数学的に調べた結果を著した。最も重視したことは、テクニカル分析は金融デーtあに対していったい何をしているのか、売買のタイミングの適切な出し方を算出しているのか、時間相関を通してこれらの疑問に答えることである。

テクニカル分析に用いられる指標には大きく分けて2つあり、本書ではその中でも幾つかの指標について定義を与え、その指標が実際の市場でどの程度有効かを確認している。

まあ、もちろん、これらの指標が完璧にワークして今直ぐ市場で大儲け出来るような話にはならない。 しかし、このように市場がどのような性質をもって動いているのかを数学的に記述する試みは面白く、正に自分が読みたかった本だったというわけだ。

「効率的市場仮説」を前提にしたランダム・ウォークで全ての動きが説明出来るわけもなく、直感的にもそれは分かる。 例えば本書の中では、ランダム・ウォークから外れる動きをイベントやアトラクターなどと呼んで信号処理分野のインパルス応答に見立ててモデル化している。 リーマン・ショック後にブラック・スワンなんて書籍が流行ったのもまさにそのその脱効率的市場仮説的な流れだろう。

冒頭の Hackathon の為替予測みたいに、昨今の機械学習の発展と共に市場の適用も増えていくのだろうか(現状どれほど導入が進んでいるのかは知らない)

qiita.com

一方で、自動取引が加熱しすぎた結果についての批判も生まれていて、これはオンゴーイングな議論の的でもある。

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

ねーこ on Twitter: "PTSのアルゴこれだからね。他社を誘因する以外ほかにどんな目的があるの?っていう https://t.co/kHjYv2R6DI"

市場が面白いなと感じるのは、ある手法が一般的になるとそれが陳腐化してしまう所にもある。 例えば今後 Deep Learning を使う手法が有効と見做されて一般化されたとしても、それはいずれ有効で無くなる。

未来には市場の動きやそれで儲けるための手法がどのような結果に行き着いているのだろうか。 それを見られる日が楽しみである。

狭小邸宅を読んだ

不動産クラスタでちょくちょく引き合いに出されるので気になっていた狭小邸宅を読み終えた。 ペンシルハウスを売る消費者向け不動産会社の営業をしている主人公とその業界の話である。

雰囲気は以下のbotを参照

ほかの人のレビューはこちらの総論と各論が面白かった。

『狭小邸宅』総論 - 音次郎の夏炉冬扇

そちらから参照されているように、このコメントはとても共感出来る。

なぜならどこからそうなったのかわからないが、仕事ができるようになった「僕」は終盤の友人たちに会う場面などからわかるように、確実にどこかが狂っているからだ。つまり狂った営業マンだけが「狭小」な家を「邸宅」として売ることができ、その狂気に感染した人間が「狭小邸宅」に住む。そんな怖ろしい日本の現在を鮮やかに描く、実力派のデビュー作だ。

『狭小邸宅』 (新庄耕 著) | 今週の必読 - 週刊文春WEB

探している住宅はその人の人生の投影である。Amazonなどのレビューでは小説の終わり方はあまり評価されていないが、物理的な住宅に投影される「狭小」な自分と「邸宅」な自分の無自覚な自意識を描いたラストシーンは個人的にはとても強烈だった。