市場への興味

7月に開催された Yahoo! Japan の Hack Day では最優秀賞は「日米為替における予測モデルの提案と評価 – 機械学習による為替予測AIの実装」というテーマのチームが選ばれたという記事を読んだ。どのような結果をだして最優秀賞に選ばれたのかとても気になるところである。

「異例中の異例? モノをつくらずに受賞」(Hack Day最優秀賞編) - Yahoo! JAPANコーポレートブログ — 「異例中の異例? モノをつくらずに受賞」(Hack Day最優秀賞編)

最近は市場が面白くて、金融についての書籍を気の赴くままに読んでいたりする。 数字の上下とそれを統一的に説明するような構造の理解には興味をそそられる。 直近読んだ書籍で面白かったのはこちら

金融データサイエンス―テクニカル分析の新展開

金融データサイエンス―テクニカル分析の新展開

千葉大工学部の先生の書かれた本で、日経平均の過去データを使いながらそれがどのような統計的性質を持っているかを教科書然として分かりやすく説明している。 例えば、株式市場の値動きは基本的にはほぼランダム・ウォークであるということは広く知られているが、それを実際に確認する。 日経平均や為替やトヨタの株価などの自己相関関数をプロットしてみても、95%の信頼区間の中に収まるという。その程度ではランダムに相場は上下しているのである。

現代のポートフォリオ理論の前提となる考え方に「効率的市場仮説」というものがある。市場は効率的であり、すべての情報は一瞬のうちに価格に織り込まれてしまうという考え方だ。 価格決定モデルとしても有名なブラック・ショールズ・モデルもランダム推移を前提としている。

それでは、株取引における経験則やテクニカル分析などは全てデタラメなのだろうか。 そのような疑問を解消しようというのがこちらの本の目的の一つでもある。

テクニカル分析が成功するのは、データに時間相関があり、その時間相関を引き出せるようなテクニカル指標が利用できる場合に限られる。従来の指標がそのような性質を持ち合わせたものだろうか、この疑問に答えるのが本書の1つの目的である。時間相関があるからこそ、将来がある確率でもって見通せる。 (中略) 本書では、テクニカル分析に利用価値があるのか、どのような場面で価値があるのかを数学的に調べた結果を著した。最も重視したことは、テクニカル分析は金融デーtあに対していったい何をしているのか、売買のタイミングの適切な出し方を算出しているのか、時間相関を通してこれらの疑問に答えることである。

テクニカル分析に用いられる指標には大きく分けて2つあり、本書ではその中でも幾つかの指標について定義を与え、その指標が実際の市場でどの程度有効かを確認している。

まあ、もちろん、これらの指標が完璧にワークして今直ぐ市場で大儲け出来るような話にはならない。 しかし、このように市場がどのような性質をもって動いているのかを数学的に記述する試みは面白く、正に自分が読みたかった本だったというわけだ。

「効率的市場仮説」を前提にしたランダム・ウォークで全ての動きが説明出来るわけもなく、直感的にもそれは分かる。 例えば本書の中では、ランダム・ウォークから外れる動きをイベントやアトラクターなどと呼んで信号処理分野のインパルス応答に見立ててモデル化している。 リーマン・ショック後にブラック・スワンなんて書籍が流行ったのもまさにそのその脱効率的市場仮説的な流れだろう。

冒頭の Hackathon の為替予測みたいに、昨今の機械学習の発展と共に市場の適用も増えていくのだろうか(現状どれほど導入が進んでいるのかは知らない)

qiita.com

一方で、自動取引が加熱しすぎた結果についての批判も生まれていて、これはオンゴーイングな議論の的でもある。

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

フラッシュ・ボーイズ 10億分の1秒の男たち

ねーこ on Twitter: "PTSのアルゴこれだからね。他社を誘因する以外ほかにどんな目的があるの?っていう https://t.co/kHjYv2R6DI"

市場が面白いなと感じるのは、ある手法が一般的になるとそれが陳腐化してしまう所にもある。 例えば今後 Deep Learning を使う手法が有効と見做されて一般化されたとしても、それはいずれ有効で無くなる。

未来には市場の動きやそれで儲けるための手法がどのような結果に行き着いているのだろうか。 それを見られる日が楽しみである。